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外部記憶装置としての『経』

アンコールワット碑文
Cambodia , 2005

「経」(きょう)はsutta(パーリ語)sutra(サンスクリット語)の訳で「たて糸」の意味です。
(北極から南極をつなぐ仮想のたて線を「経線」というのも同義ですね)

その「たて糸」の意味から
「すじみち」「ことわり」へ意味が転じ、
物事のすじみちを記し、人々の規範となるものを表わすようになりました。

儒教や道教などでも、規範となる書物を「経」といいますが、
仏教では、ブッダ(お釈迦さま)の説かれた言葉を編纂したものが
「経」といわれます。

出家集団のルールを示した「律」や、
経の解釈をした「論」などは、ブッダの言葉でない部分も多いので
厳密に言うと「経」とは言えませんが

中国や日本では「経」「律」「論」の三蔵をまとめて「経」という場合があります。
(仏教の聖典を全てまとめて『大蔵経』や『一切経』と称しますが
「経」「律」「論」が全て含まれています。)

「経」がブッダの言葉だと言っても
ブッダが「経」を書いたわけではありません。


ブッダの説いた教えを弟子から、またその弟子へと
口伝で継承していったものが「経」です。

ですから、私達がお経といって思い浮かべる書物としての経典は、
ブッダがなくなられて数百年してから誕生することになります。
文字で著された最初のお経は、ターラという葉を乾かしたものに書き記したようです。


ここで疑問に思うのが、
なぜ数百年間も文字で保存せずに、口伝で伝承されてきたのでしょうか?


背景には、聖語は口伝でのみ伝承されるべきとするインド文化の影響があると思われます。
バラモン教の聖典「ヴェーダ」はバラモン(司祭)階級が子弟にのみ口伝していきます。
そこには、バラモン階級のみで秘密を保持することによって
特権階級として存続していく意図があったことは間違いありません。

バラモン階級以外の人間が「ヴェーダ」を口伝しているところを故意でなくても
聞いてしまったら、その者の耳に水銀を流し込む罰を加えることもあったそうです。
(恐ろしい・・・)

そのような口伝の伝統がある社会背景とともに
大切なブッダの教えを確実に記録していくため
口伝されていった必然性があったと考えられます。



本日の朝刊の記事に
ヤフーの子会社が運営するレンタルサーバーでシステム障害が発生し
5698件(!)の企業のホームページのデータが消失した、とありました。
消失した原因は、セキュリティー対策を更新する際の不具合で
バックアップデータも含めて消失してしまったそうです。

他人事ながら心配になりますが、他人事ではありません

最近はクラウドサービスが大流行で、自分のパソコンでなく
外部の巨大なサーバーにデータを保存しておくことによって
自分のパソコンが壊れてしまっても、外にデータがあるから大丈夫だといいます。

私もエバーノートやGメールなどのクラウドサービスを利用していますが、
そのアメリカの企業のサーバーは絶対に大丈夫か?というと、そんなことはないでしょう。

自然災害や突発的な事故、今回のような人為的なミス、あるいは
民間企業ですから、突然サービスを停止しないとも限りません。
また、自分の膨大なプライバシーも含まれたデータを
企業の手元に預けておくのも不安がないとは言い切れません。


便利なモノに頼ることによって、能力が衰えていくという弊害もあります。
携帯電話が普及する前でしたら、自分に近い関係先の電話番号くらいは
だいたい覚えていましたが、携帯電話に使うようになったら記憶する必要がなくなり
私は家内の携帯電話の番号さえ覚えていません。
もし、携帯電話が壊れたり、紛失してしまったら、本当に困ってしまいます。


やはり大切なことは外部にだけでなく、身につけておくのが良いようです。

(後代、経典の文字による編纂が開始されたのは、
 飢饉や戦争などで比丘が死に絶えてしまい、
 経自体が損なわれてしまう危険性を回避するという理由もあったそうなので
 使える手段は最大限活用して万全を期すことも大事です)


料理の本が無ければ、全く料理ができない人よりも
色々なレシピが頭に入っている人の方が困る場面は少ないでしょう。


脳の記憶能力の可能性を教えてくれる事例があります。


日本テーラワーダ仏教教会の機関紙『パティパダー』の2008年7月号に掲載されていた
スマナサーラ長老の法話のなかに以下のようなくだりがありました。

この間こちらで
「仏教を信じるということは、出家することでしょうか?」
と質問されました。

そう訊かれた瞬間、私は頭の中で、
すべての経典をサーッとよぎってみたんですね。

そうしたらお釈迦様は一度も、誰にも、
「出家しなさい」」と言ってないのです。
(以下略)



経典がすべて頭に入っているということは、
いつでも参照できるし失うこともないということです。

私たちも長老とは比べものになりませんが、掛け算九九など身に付けたものは
失わないし、一生役に立つわけです。


もちろん、これから私たちが長老のように経典をすべて丸暗記する必要も、
できる可能性もないわけですが、

2600年も大切に伝承されてきた智慧の集大成の「経」を
覚えるというよりは、口ずさめるくらいに慣れ親しんでくださると
「経」も(外にある)聖なる書物でなく
(私の内にある)生きた教えとなるのではないかと思います。



以下に私がおすすめする「お経」の本をご紹介します。

『ダンマパダ』全詩解説―仏祖に学ぶひとすじの道『ダンマパダ』全詩解説―仏祖に学ぶひとすじの道
(2009/12)
片山 一良

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税別9000円と高価ですが、ダンマパダの全ての偈と
その偈が読まれた背景を注釈書から引用していて理解が深まります



ブッダの福音―最初期仏教資料集成ブッダの福音―最初期仏教資料集成
(2007/05)
正田 大観

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原始経典の韻文(詩)を網羅した内容の濃い一冊です。
パーリ語の原典に忠実な翻訳はスマナサーラ長老も推薦しています。



心に怒りの火をつけない  ~ブッダの言葉〈法句経〉で知る慈悲の教え (角川文庫)心に怒りの火をつけない ~ブッダの言葉〈法句経〉で知る慈悲の教え (角川文庫)
(2011/10/25)
アルボムッレ・スマナサーラ

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スマナサーラ長老による法句経(ダンマパダ)の解説です。
短い偈に込められた深い意味に触れることができます。



原訳「法句経」(ダンマパダ)一日一悟原訳「法句経」(ダンマパダ)一日一悟
(2005/11)
アルボムッレ スマナサーラ

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前掲書の続編。こちらは単行本。



ブッダの日常読誦経典[完全版 CD BOOK] (3675)ブッダの日常読誦経典[完全版 CD BOOK] (3675)
(2011/03/28)
アルボムッレ・スマナサーラ

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パーリ語で日常的に読経する経典の内容に沿って編集され
スマナサーラ長老の読経が録音されたCDが付いています。


写真は、アンコールワットの柱に刻まれた碑文

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プロフィール

ハラジュンリョウ

Author:ハラジュンリョウ
大分市明西寺住職。
1972年生まれ。
武蔵野美術大学彫刻学科卒業。

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